Cafe time*じゃむ〜作る喜び*ヒトリゴト〜

 


セット


vol.1 2007.1.21

音楽は日常から

................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................

音楽教室を始めるにあたって、まず考えたことは、
『自分はナニを教えたいのだろう?』

私は、たくさん練習してわりと弾けるようになりましたが、音大に進む気持ちにはなれず、
クラシックに蓋をしてその後しばらく、迷う日々を味わいました。
紆余曲折を経て、今では『音楽を続けてて本当に良かった』と心から思っていますが、当時は苦しかった。

音大に進んだ友達には迷いがなかったのか?
いいえ。彼らもまた苦しかったのでしょう。
大学卒業と共に意欲がなくなりやめてしまう人が多かったです。
授業や課題、コンクールなどを目標に曲をありふれた素材のように扱い、次々に弾き倒していく世界。
音楽よりも、まず競争を楽しめる強さが必要な世界。そしてコネクション、お金。

上達する上では多少の苦しみもありましょう。でもそういう類の苦しみは、楽しくもあります。
楽しくない苦しみは、本来の音楽活動にはあまり必要とは思えません。
ピアノはいつも背筋を正して一流の音楽家を絶えず意識しなければいけないのでしょうか。
音楽を楽しむ、という視野がもっと広がったらいいのに、と心から思います。

普段おうちでご飯を作るとき・たべるとき、ごろりと寝転ぶとき、どっかへおでかけするとき、
一流のご飯、一流のごろ寝、一流のおでかけを目指してますか?
失敗しちゃいけない、負けちゃいけないなんて考えてちゃ、リラックスできないでしょう?
ベートーベンやモーツァルトが見たら、まあまあ落ち着いてって言うんじゃないかな?
音楽のあり方は、その人のライフスタイルそのものだといえるでしょう。

ピアノや唄うことを通して、音楽と自分の可能性を知る。
楽しさは、日常レベルでの自分力の開花にあります。
じゃむは音楽教室なので、ピアノや楽譜のことを教えますが、実際のところはそれを通して、
『ああ、私って結構ロマンチストだったのね』とか
『俺ってナイーブな中にもタフさがあるんだ』とか、内蔵されている自分を開花させていくのは、
あなたにしかできないかけがえのない仕事なのですから。

人の顔が一つ一つ違うように、音楽の楽しみ方も一人一人違います。
教え方も、教わり方も、人の数だけ生まれたら、世の中もっと楽しくなる。
多様性が、これからを作っていくキーワードだと思います。





vol.2 2008/1/24

小さな革新家たち

...............................................................................................................................................................................................................................................................................................................................

「あのね、よっちゃんが、なおちゃんの指、ふんづけてひいていいからね。」
といって、3歳の女の子が、ピアノの白い鍵盤に、自分のゆでる前のマカロニくらいのホソッコイ指を置く。
その指の上に、私のごつい指をもう片方の手でえいっとつかむと、自分の指の上に重ね置いて、
「はい、いっしょにー?」
彼女は甲高い声で私に号令をかけ、私も「はーい」と真面目に返事をして従う。

むぎゅむぎゅと二人で打鍵する。大小人差し指一本ずつによる演奏開始である。
まあ当然いわゆる「まともな」音は出ない。
だが、やはりそこには、その打鍵法でしか鳴らないへんちくりんな音がちゃんとうまれるのである。そして、
「じゃあこんどは、ぎゃくねー。」という彼女の号令で、指の上下を入れ替える。

「いまのはね、こわいおばけさんだったの。そこに、やさしいおばけさんがきてね、こわいおばけさんをおいかけるんだよ、まてーってね。はい?」
先にうまれたへんちくりんな音は、彼女なりのイメージでこわいおばけさんとなり、ストーリーが走り始める。
イメージを音が追いかける。音がまた生まれる。それがまた新たなイメージとなり、ストーリーを呼び、さらに音になる。
打鍵法もどんどん冒険的になっていく。しまいには椅子の上に立ち上がって、
「いくぞー。はい?」
結局、こわいおばけさんとやさしいおばけさんは仲良しになって、二本の人差し指は最後の打鍵のおしまいに、ぴったり合わさってチューをした状態をもって演奏終了となった。

ピアノを打鍵するときは、手のひらに卵が入ってる形にして〜。とか、指の第一関節を使って〜。とかが大事なのは百も承知なわけだけど、
どうです?この3歳児の音楽家としてのパワー。
この子が特別なんじゃないんです。
実は、ほとんどの子どもは、みんなこうなの。
それはものすごい宝なんですよ。
だけど、悲しいかな、それをおふざけとか、熱心さにかけるとか、つぶしちゃう場合がほとんどではないかと思うんです。

いわゆる正解が、必ずしも正解とは限らない。
植物が、はじめから緑の葉っぱを繁らせるのではありません。
種から。土から。殻をやぶってぐいっと頭を持ち上げてくる、あのパワーです。
柔らかい芽が、硬い殻と土を突き破って、本能的に天を仰ぐ力。
種の形も、葉の色も大きさも、千差万別。
どうか伸び伸びと、ぐんぐんと育っていきますように☆
小さな革新家たちに出会うたび、そして彼らの中に眠っていた陽の暴君が目覚めるたびに、心からエールを贈るワタクシなのです。





vol.3 2008/2/16

先に進みたいキモチ

.........................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................

いろんな生徒さんに接して、音楽を客観的に捉える訓練に身を投じてみると、
自分の中にある、知らないうちにできた
垣根にハッと気づかされることの連続です。
それはとてもありがたいことです。
垣根というのは、自分の体にすりこまれている暗黙のルールを指します。

クラシックの場合だと、楽譜をしっかり読むことに始まって、弾きこむ、暗譜する。
一曲を完成(といっても終わりはないわけですが、その時点でのベストという意味)させるのに何ヶ月も必要。
それは本当にそうなんですが、そうしなきゃいけないわけではない。

ジャズやポップスなどでも、アドリブ(即興演奏のこと)だろうと決められたフレーズだろうと、
曲全体の流れやアレンジの構築は、やはりその時点でのベストを目標に挑んでいくわけです。
それも本当にそうあるべきなんですが、
でもやはりそれも、あくまで私の趣向であって、誰もが「よーし挑むぜ」とかやらなきゃいけないわけじゃない。

ベストを尽くす、という意味合いがどこを指すのか?
いい加減でよいという意味ではないですよ。
その人にとって、頂点とは何か、というかんじでしょうか。

好きな曲を弾けるだけで至福。
そんなに上手に弾けなくても、なぞれるだけで満足!
好きな曲がいっぱいあるからとりあえず弾ける曲数を増やしたい!

生徒さんたちのこんな感覚が、きっと楽しい音楽の素なんだとハッとしました。
それを味わう暇もなくただただ習ってきた自分にとって、とても斬新で眩しいくらいの感覚。
センセイなんか弾いてくださいって言われて、弾くたびに、
「すごーい、いいなあ、気持ちいいでしょう?」
「コンだけ弾けたらドンだけ気分転換になるでしょうねー?リフレッシュできていいですねー!!!」
音楽教室だけじゃない。ライブでも、「よかった」って言われても、
いつも私はきょとんとしていて、どうしていいかわからないでいました。

気分転換に弾くとか、バッチリよかった!とか思ったこと一回もなくて、
弾くことはすなわち修行っていうか、限界を越せるかどうか挑む真剣勝負の時間ていう意識しかなくて。
そして「完璧」なんて終わりがない世界なので、いつも越せない勝負、みたいな。終らない坂みたいな。
だからちっとも「よく」弾けてない。苦悩こそあれど気分転換なんてありえない。
そういう垣根で自分を囲っていたのです。

ようやくそうじゃないんだってことに気づきました。
先に進みたい気持ちが今日もある。
それが幸せで、幸せであればベスト
なんだって。
生徒さんたちサマサマです。ほんとにどうもありがとう。



Cafe time のトップに戻る

HPのトップに戻る